7月の掲示板の言葉
「時は早く過ぎる、光る星は消える」〜無常の現実に学ぶ浄土のみ教え~
『それいけ!アンパンマン』の主題歌「アンパンマンのマーチ」の一節です。「時は早く過ぎる、光る星は消える」
この歌詞、皆様はどのように受け止められるでしょうか。
「時は早く過ぎる」とは、まさに私たちの人生そのものです。つい先日生まれたばかりのように思えた子が、いつの間にか立派な大人になり、私たち自身も、気づけばしわが増え、白髪が目立つようになっている。時間の流れというのは、誰も止めることができません。それはまるで、止まることのない川の流れのようでもあります。
「光る星は消える」。夜空に輝く星々は、いつまでもそこにあり続けるかのように見えますが、実は常に生と消滅を繰り返しております。遠い昔に輝いていた星の光が、今ようやく私たちの目に届いているだけで、その星自体はすでに消滅しているかもしれません。また、夜空に燦然と輝く星も、朝が来れば太陽の光に隠されて見えなくなります。これもまた、一つの「消える」姿でございましょう。
この「時は早く過ぎる、光る星は消える」という言葉は、諸行無常(しょぎょうむじょう)」という仏教の根本原理とも重なります。世の中のあらゆるものは、常に変化し、とどまることがない。形あるものは必ず壊れ、生まれたものは必ず滅びる。これが、この世界の厳然たる事実です。
私たちは、この無常の現実に直面した時、一体何を頼りとして生きていけばよいのでしょうか。
移ろいゆくものばかりの中で、永遠なるものを探し求めても、それは幻に過ぎません。財産も、名誉も、健康も、そして私たち自身の命でさえも、いつかは必ず失われていくものです。
この「無常」という真実を深く見つめる時、私たちは自らの力ではどうすることもできない、限界のある存在であることに気づかされます。そして、そのような私たちを、阿弥陀様は「必ず救う」と誓ってくださっているのです。
浄土真宗の教えは、この「阿弥陀仏の本願(ほんがん)」、つまり阿弥陀様の「必ず救う」という大いなる願い聞くことに尽きます。私たちの限られた命、そして移ろいゆくこの世の中で、何一つとして確かなものがないように思われる中にあって、ただ阿弥陀様の本願だけが、永遠に変わることのない、確かなよりどころです。
私たちは、自分の行いや努力によって悟りを開こうとする「自力(じりき)」の道ではなく、阿弥陀様の他力(たりき)、すなわち阿弥陀様のはたらきに全てをお任せする「他力本願」の教えをいただきます。
「時は早く過ぎる、光る星は消える」。この言葉は、私たちに「今、この時」を大切に生きること、そして限りある人生の中で、真実の教えに出遇うことの尊さを教えてくれます。無常なる世の中であるからこそ、阿弥陀様という変わらぬよりどころに深く帰依し、日々の生活の中で「南無阿弥陀仏」のお念仏を称えさせていただく。そこに自らの命の居場所を聞いていくのです。
このアンパンマンの歌の一節から、仏さまの深い智慧と慈悲に触れていただければ幸いです。合掌。