【読書シリーズ📚】『妙好人』鈴木大拙㊹~有福の善太郎6~
前回も、引き続き、島根の妙好人、善太郎さんを紹介しました。
・「家はどこか」と問われたことに対し、「家は無い。如来の家に置かせてもらっている」と答えた、善太郎さん。
・善太郎さんが不在の時に、訪ねてきた方に対して娘さんが「あなたの後生は明晩まで待たれるのですか?」と返し、共にご法義味わって帰った、そんな娘さんまでいた善太郎さん。
・最愛の牛の臨終のとき、御文章を持ってきて、読み聞かせた善太郎さん。
・住職ではなく、話の苦手な小僧の話も、「末代無智の御文章のようでありがたい」と敬った善太郎さん。
・御文章の言葉、「釈し」を「杓子」と読み、自分が救い取られることを喜んだ善太郎さん。
今回もまた、この方のエピソードを紹介します。

鉄をも溶かすような真夏の或る日、善太、終日の労働を終って、山より帰って来た。
然るにどうしたことか、その日に限り、女房は行水のお湯も沸かさず、お夕飯の準備も、ろくろくしていなかった。
帰るや、夫婦は声荒くも二口三口争っていたが、やがて善太の肝癥玉はついに破裂した。
「己れッ」と言いながら、側にあった割木を取って振りあげた。
今や正に打ち下さんとす るその刹那、強いく「如来の叫び」に気づかして貰った。
早速お佛檀にお燈明をあげ、くだんの割木を仏前に供えながら、静かに合掌しつつ、「善太が出ました、善太の地性が出ました」と、 涙ながらにお念佛三味に入った。
私の、好きなエピソードの一つです。
奥さんに、手を挙げようとした瞬間に、気づいたのです。妙好人とは、清らかな聖人を言うのではないのです。心の底に、何を犯してもおかしくない煩悩の種を宿しながら、しかし仏様の呼び声を味わっていく存在なのです。
暑い日。1日の労働を終えて、帰宅した善太郎さん。
「さあ疲れた、風呂に浸かって、お酒でも頂くか~」
と意気揚々と帰宅した善太郎さん。
しかし、いつも通りの準備がなされていないのです。
お風呂の準備も、夕飯の準備も、用意がされていなかったのです。
その時、善太郎さんの頭に血が上りました。怒りの炎が、メラメラと燃えてきたのです。
イライラ・・・イライラ・・・
イライラ・・・
女房は謝りにすら来ない。
イライラ・・
その時、手が上がり、暴力に移ろうとした瞬間。フッと、お念仏が口を突いたのです。
「ああああ、なんとしたことを。悪性が出ました。私の本性が出ました。申し訳ありません。南無阿弥陀仏」
と、その振り上げた割り木を持ったまま、お仏壇の前に向かいました。「善太が出ました、善太の地性が出ました」と、 涙ながらにお念佛三味に入った。
自分すら、自分をコントロールできないのです。
だからこそ、畢竟依。よりどころが必要なのです。
良いことで人を喜ばせ、悪いことはするな。そのシンプルなことすら、ままならないのです。
だからこそ、仏様の、「何があろうと、お前の命を見捨てはしないよ。傷つける悪性があることも、お見通しだよ。」というお悟りの目線を恵まれることが大切なのです。


“【読書シリーズ📚】『妙好人』鈴木大拙㊹~有福の善太郎6~” に対して1件のコメントがあります。